第57話 / 全71話
第57話
酒を三壺も飲んだ。この太子の身体は、とにかく酒に弱い。本来なら三杯で潰れる程度なのに、意地になって三壺も空けたせいで、頭の中は綿でも詰められたみたいにふわふわしていた。視界は二重になり、月まで二つ見える。その時だった。屋根の向こうで瓦がかすかに鳴る。顔を向けると、鮮やかな紅色が塀を軽やかに飛び越えてきた。猫のように音もなく着地する。風にあおられた吉服が大きく揺れ、金糸で刺繍された龍が月明かりにきらりと光った。
「……なんで来たの」
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第57話 / 全71話
酒を三壺も飲んだ。この太子の身体は、とにかく酒に弱い。本来なら三杯で潰れる程度なのに、意地になって三壺も空けたせいで、頭の中は綿でも詰められたみたいにふわふわしていた。視界は二重になり、月まで二つ見える。その時だった。屋根の向こうで瓦がかすかに鳴る。顔を向けると、鮮やかな紅色が塀を軽やかに飛び越えてきた。猫のように音もなく着地する。風にあおられた吉服が大きく揺れ、金糸で刺繍された龍が月明かりにきらりと光った。
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