第30話 / 全71話

第30話

翌朝。空がまだ完全に明るくなる前に、福海が自ら東宮へ太子の朝服を届けに来た。黒を基調とした生地に、暗い金糸で雲紋があしらわれている。襟元には四本爪の蟒龍の刺繍。

私は銅鏡の前に立ち、宮人たちに冠を整えられ、帯を締められ、衣の皺を直されながら、鏡の中の十八歳の少年の顔を見つめていた。鋭い眉。澄んだ瞳。ようやく大人び始めた顎の輪郭。それでも、まだ少年らしい細さが残っている。前世ではシャツとズボンばかり着ていた私にとって、今世で太子の衣装を身につけるようになって三ヶ月経った今でも、この重厚な服は肩に重くのしかかるような気がした。