第21話 / 全21話
第21話
入籍の三ヶ月目、式を挙げた。 篠宮玲は盛大にしろと言い、私はどちらでも、夫人は私に任せ、厳は態度を示さない——翌日、本邸の書斎の灯が、一晩ついていた。 決まった主題は、「梧桐」。 迎賓の背景は、あの絵の拡大だ。 記帳の仕方は特殊で、来賓一人ひとりが梧桐の葉の付箋に署名し、背景の樹冠へ貼る。 プランナーがこの趣向を説明するとき、玲を盗むように一目見た。 「社長が、絵は花嫁が締める、と。だからこの壁も、来賓と一緒に描き切るそうです」 振り返って見る。 耳の根はもともと赤く、今回は首まで赤い。
式の前日、一ノ瀬が引き摺られた。 午前五時、車で本邸へ迎えに来て、欠伸を噛みながら罵る。 「玲、勘定しろ。追うときは優先診療。落ちたら飲み。喧嘩したら飲み。仲直りしても飲み。昨日は入籍の運転手。今日は結婚の付添い」 「江都中の病院が、俺を何て呼んでるか知ってるか」 篠宮玲は無表情だ。 「何だ」 「篠宮御曹司の恋の警備」 奥歯を噛む。 「再診料は主任クラスだぞ。週末に診ないのは、恋の警備のためか」 考えて、真剣に言う。 「苦労をかけた」 一ノ瀬が感動しかけたところで、 「名付け親の席は」 追い打ちを入れる。 「まだ空だ」 「……誰が息子の名付け親になるか! ぺっ」 二秒後。 「名付け親なら、名付け親でいい」 襟を直す。 「先に言っておく。呼び名の礼金は、安くするな」
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