第19話 / 全21話

第19話

父は椅子に崩れ、長く喋れない。  母は泣き止み、ぼんやり私を見る。 「昭……五年、恨む相手を間違えて、あなたまで……害したの?」

「あなたたちは、私を害してない」  見て、一字ずつ。 「綾瀬家が局を組んだ。それを知らなかった分は、あなたたちには載せない」 「でも」  銀行の流れを抜き、卓に叩きつける。 「最初の一筆を受け取ったとき、この金が篠宮と、私の子どもに関わることはわかってた」 「妊娠も、一人で外にいることも、知ってた」 「五年。千八百日以上」 「きらを産んだ日、十一時間痛んで、同意書の家族欄は、空欄だった」 「電話、一本もなかった」 「ママ」  声は安定していて、安定が怖い。 「あのとき、手元に六千九百万あった。一円もない私が、どうやって生きたか、考えた?」